2023
11.01
名前も写真も掲載しない「先輩インタビュー」に情報価値はあるのか?

名前も写真も掲載しない「先輩インタビュー」に情報価値はあるのか?

CONTENT MARKETING

就活生が参考にしているのが企業サイトの採用情報です。しかし先輩インタビューのページを開いてみると、顔出しNGで名前も伏せられるなど「誰?」と思わずにはいられません。無機質で現実味のない先輩たち。無理して出さなくてもいいような気もしますが、一体どんな事情があるのでしょうか?

コレというものがないときに使える唯一無二の社員

他社と似たような製品に技術、業界的によくある社風と待遇。人手不足に悩みながらも差別化できるような要素は見当たらず。コレというものがなければ若い就活生の胸に刺さりません。

その点、唯一無二の社員を紹介できる「先輩インタビュー」は採用情報に欠かせない鉄板コンテンツです。掲載されているのは名前、所属部署、入社年、卒業校、志望動機、主な仕事内容、仕事のやりがい、1日のスケジュール、会社の雰囲気、一番嬉しかったこと、休日の過ごし方、就活生へのメッセージなど。現役社員の生の声がまとまっているだけに関心は高く閲覧数を稼ぎやすいページといえます。

テキストだけでなく写真も盛りだくさんなのが先輩インタビューの特徴です。ジェスチャーを交えながら取材を受けているシーンのほか、パソコンの画面を見つめる、同僚と歩きながら談笑する、ランチタイムを楽しんでいる、キャビネットから資料を取り出すといった社内的日常を切り取るのが一般的です。どれもフリー素材で見つかりそうな写真ですが、実際に撮ったものはリアリティが違います。

YouTubeアカウントを持っている会社だとインタビュー動画もめずらしくありません。この先輩と一緒に働きたいと思う人もいるはずです。

と、大きな訴求力を持つ先輩インタビューですが、実際に制作するとなると悩ましい問題にぶつかります。

似顔絵とイニシャルで紹介される会社の某先輩たち

その問題についてですが、似顔絵とイニシャルで紹介される先輩紹介の記事を見たことはありませんか?

似顔絵って本人の顔を知っているからこそ「あ、似てる」と思えるもので、知らない人の似顔絵を見てもピンときませんよね。イニシャルもS.AさんとかT.Kさんとか「本当にいるんですか?」とシンプルに疑ってしまいます。

写真と名前がない場合、どんなにいい話をしていてもスッと頭に入ってきません。選挙ポスターでも顔写真を見て名前を確認してからマニフェストに目を向けたりするじゃないですか。そのくらい大事なところをぼかしているわけですからコンテンツの情報価値は落ちます。

言うまでもなく苦肉の策です。

いろいろ配慮した上でそうせざるを得ない時代です。

社員とはいえ一般人なので可能な限り本名を出したくないのが普通です。WEBページに載れば検索にも引っかかってしまいますし、職場を知られたくない人にとっては絶対NGです。採用活動には協力するけど個人情報を掲載しないのが条件。そんなこんなで出来上がるのが「誰?」とツッコミたくなる先輩インタビューの数々です。

店員さんの名札に下の名前だけとか、あだ名や源氏名を書くカスハラ対策と根本的な理由は一緒なのかもしれません。

属人的なコンテンツは賞味期限の短さがネックに

紹介される先輩社員だけでなく会社側にも個人情報を伏せておきたい理由があります。

誰がいつ辞めるかわからないからです。

しっかりインタビューして撮影してページを公開して。にもかかわらず就活シーズンがピークを迎える前に退職することも考えられます。タイミング的にいい辞め方ではないでしょうから、公開中の先輩インタビューは双方にとって黒歴史でしかありません。あと事件や事故、なにかしらの不祥事に絡む可能性もゼロではないはず。いずれにしても該当ページを落としてからGoogleに削除をリクエストするなど後味の悪い作業が残ります。

これが誰もが知っているような大企業や有名企業だと、先輩社員として紹介されるのは誇らしいことなので本名や写真の公開ハードルが一気に下がります。むしろ自分で拡散するくらいなのでしょう。

で、会社の規模が小さくなるほど心中複雑な人は多いような気がします。特に製造業やIT関連など非サービス業は保守的な傾向があり、顔を売ってなんぼの営業職でもネットの表舞台に立ちたくないが本音なのかもしれません。

先輩インタビューは属人的なコンテンツです。社員に依存するページは賞味期限の短さがネックになります。

ではどうすればいいのでしょうか?

人に頼るのが難しいときにおすすめなのが「企業の擬人化」です。

会社=法人ですからその人格に血を通わせるようなコンテンツが欲しいところです。社風は性格、沿革は成長物語、技術は長所です。代表挨拶も堅苦しいことは言わず、新しい仲間に呼びかけるつもりで語りかけてみませんか?