08.29
ダウ90000「蓮見翔」はキングオブコントを獲れるのか?
2024年8月16日に「キングオブコント2024」の準決勝進出者が発表されました。セミファイナルに残ったのは計35組。好き嫌いは関係なくもし優勝したらコントの歴史を塗り替えそうだなと思うのが「ダウ90000」です。一昨年は準々決勝、昨年は準決勝で敗退。しかし今年は一気に頂点へと駆け上がりそうな勢いがあります。
単独チケット即完の実力派集団をけん引する才能
作家として演者として8人組ユニット「ダウ90000」をけん引しているのが主宰の蓮見翔(はすみしょう)さんです。
1997年生まれの27歳。
爆笑問題さん、宮藤官九郎さん、三谷幸喜さんを輩出した日本大学芸術学部(日芸)出身。2020年に演劇サークルを前身とする「ダウ90000」を結成。単独公演のチケットは即完売、演劇界の芥川賞と言われる岸田國士戯曲賞最終候補、さらにフォーブスの世界を変える30歳未満の日本人(FORBES JAPAN 30 UNDER 30 2023)にも選出されるなど新進気鋭かつ業界大注目のクリエイターです。
コントはもちろん、演劇、漫才、ドラマなど数々の脚本を手掛けながらキングオブコント、M-1グランプリ、ABCお笑いグランプリ、R-1グランプリ、THE Wなど賞レースにも積極的に挑戦しています。特にABCお笑いグランプリは3年連続決勝に進出と大活躍。3度目の正直だった今年は惜しくも3位に。
ということで次なる目標はキングオブコントのチャンピオンです。
すでに2年連続の準決勝進出を決めている状況。メンバー全員20代の8人組。もし決勝に残ればにゃんこスター以来のビッグニュースになりそうですが、果たして実現するのでしょうか?
ダウ90000に関しては長らく付きまとっている課題があります。
コントか、それとも演劇か。
確か蓮見さん自身も嫌気が差している話です。そこに線を引いたところでなにかいいことがあるわけでもなく、漫才か漫才じゃないか論争よりも不毛なテーマなのかもしれません。やった結果、見ている人たちがどう思うかはもちろん自由で、仮にモヤモヤしたとしてもただそう感じたというだけではないでしょうか。
少なくともキングオブコントの準決勝進出に残っているわけですから、審査員の方々がコントと認識していることは疑いようのない事実です。
男女8人組による心の声丸出しの会話コントが面白い
やたらと登場人物が多い映画を見ているとき「この人、なんだったっけ?」となりやすいですよね。
オーシャンズ11からオーシャンズ12、さらにオーシャンズ13になったときはついていくのが大変でした。なんとなく7人までなら識別可能だったりするじゃないですか。七人の侍、サイボーグ007、男女7人夏物語みたいに。
そのせいか8人になると桁が増えたかのように一時記憶が難しくなります。
もし家族モノだったらヒロインの女子高生、サラリーマンの父とパート勤務の母、3つ上に大学生の兄がいて、同居中の祖母、回想シーンに現れる祖父、この春に離婚して出戻ってきた元ヤンの姉、お節介な隣のおばちゃんとキャラクターが明確なので迷うことはありません。
その点、ダウ90000はメンバー全員20代で男女4人ずつの8人組。もし勝ち上がれば史上最多人数のファイナリストです。
これまで大人数ユニットが決勝に進出したことはあるのでしょうか。
2012年のキングオブコントでは5人組ユニット「夜ふかしの会」がファイナリストになっています。ほぼ同世代の男性5人なので区別は難しかったのですが、あえて個性を没するようなコントだったので楽しく見ることができました。結果は6位と健闘。ちなみにバイきんぐの2人が「なんて日だ!」で日本列島を揺らしてチャンピオンになった伝説回です。
一方、ダウ90000はどうかというと。
基本会話劇で視聴者側からだと心の声丸出しの若い男女8人がペチャクチャしゃべっているのを傍観しているような感じです。痴話喧嘩っぽいのが多いイメージでしょうか。
おかしい人がおかしなことを言い続ける従来のコントスタイルとは違います。学生服を着たり、女装したり、白髪ヅラをかぶったり、クセ強めの寿司職人に扮したりすることはありません。やってもカフェ店員かスーツ姿の会社員くらいです。
8人で舞台に立つ以上、人数分のややこしさは付随します。すぐに覚えられるのはギャル風の吉原さんくらいだと思います。
ただ誰もが一度は思ったことがあるけど可視化してこなかった状況を見せてくれるので、ずっとクスクス笑えます。8人の関係性さえインプットできれば手を叩いて爆笑する瞬間が必ずやってきます。単独公演チケット即完の実力はあなどれません。
めちゃくちゃおいしいお口替わりのシャーベットだったら
そんなダウ90000が準決勝を勝ち上がって決勝に行ったとしましょう。
次の懸念材料は審査員とのジェネレーションギャップです。
前回の審査員は山内健司さん(かまいたち)、秋山竜次さん(ロバート)、小峠英二さん(バイきんぐ)、飯塚悟志さん(東京03)、そして審査委員長の松本人志さんでした。
最年少の山内さんでも43歳なのでダウ90000のメンバーとはひと回り以上離れています。親子ほどではないものの親戚のおじさん感は否めません。漫画、アニメ、ゲームでの例えはお子さんの興味と一致していない限り通じないはずです。とはいえ蓮見さんも基本的なワード選びは間違わないと思います。業界注目の8人組なのでやりたいこともスタイルもよくわかっていると。やはり5分間のクオリティとボリュームに点数を入れてもらえるかどうかがポイントになりそうです。
他のファイナリストが「おかしな人がおかしなことを言い続ける」のに対してダウ90000は「ごく普通の人たちが心の声を交わし続ける」と。
もしトップバッターだったらひっくり返されそうですよね。
おかしな人の登場が続いて食傷気味になってきた5~6番手くらいならファーストステージ突破の可能性が出てきます。お口替わりのシャーベットがビックリするくらいおいしかったみたいな。その後の肉料理とデザートが期待外れだったら逃げ切れるのかもしれません。
そして3組で争うファイナルステージは蓮見さんの隠し玉に期待したいところです。賞レースの審査でよく言われるのが「もうひと展開あれば」ですよね。これまでダウ90000のコントでは忽那さんが新展開のきっかけをつくってきたと思いますが、今回はどこで出てきてなにを言うのかが本当に楽しみです。
と、あくまでも想像の話ですがダウ90000および蓮見翔さんがキングコントを獲るなら今年のような気がしてならないのでカタカタと書いてみました。