2024
05.08
バックアップさえあればなんとかなる

バックアップさえあればなんとかなる

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公開済みのコンテンツはサーバーに蓄積されていきますが、意外とローカルにデータを持っていなかったりしませんか?WordPressに直接入力している人も少なくないと聞きます。もしなんらかの理由によりデータが消えたとしたら冷や汗が止まらないですよね。そんな万が一の備えがバックアップです。

クラウドとフラッシュメモリで薄れゆくバックアップ意識

ひと昔前だとかなりマメにバックアップを取っていたという印象があります。HDDの調子が悪くなることもめずらしくなかったため、NASなど外部デバイスにコピーを取るか同期させておくのが普通でした。

ところがいつの頃からかデータが突然消えるイメージはなくなり、バックアップの必要性が薄くなった気がします。必要なのはわかるけどたぶん消えたりしないんじゃねーの的な感覚です。

なぜそうなったのかというと、ひとつはクラウドサービスの普及が考えられます。

メール、写真、動画、音楽、共有ファイル、その他のなにか。

日常使用しているデータのほとんどがクラウドにあるため、雲の上の誰かがちゃんと管理してくれているような安心感が「まいっか」と思わせているのかもしれません。

もうひとつはフラッシュメモリです。

USBメモリやSSDって壊れゆくイメージがないですよね。実際には精密機器なので使っていても使っていなくてもいつか壊れます。ウィーンと回転駆動するHDDとは違い、ほぼ無音で機能しているため厚みだけでなく存在感も薄いのがフラッシュメモリ。水没でもさせない限りデータが飛ぶ危険性は感じられません。スマホでも機種変更するときにはじめて自動実行されているバックアップを確認するとかおそらくその程度なのでしょう。

じゃこっちでバックアップを取らなくても大丈夫だよね、とならないのは万が一の事態がないこともないからです。

ファーストサーバ「データ消失事故」が残した教訓とは

IT史に残るデータ消失事故が起こったのは2012年6月のことです。ホスティングサービスの大手だったファーストサーバの障害がきっかけでした。

実は当時、ファーストサーバを利用していました。またサポート企業のうち3社もファーストサーバを利用中でこのトラブルに巻き込まれることになったのです。

その日の夕方、18時頃に1本の電話がかかってきました。相手はファーストサーバと名乗ったので新サービスの売り込みかと思いましたが内容は違いました。

「ご契約中のサーバーで障害が発生している可能性があります」

これを聞いたときはよくある障害でしばらく待てば解消されるはず、と軽く考えていました。しかしサーバー障害の連絡でわざわざ電話をかけてくるものでしょうか。また「可能性があります」という言い回しにも違和感を覚えました。

気になったためパソコンを立ち上げて確認してみると、確かにメールもつながらずサイトも閲覧できませんでした。サポート企業の方はすでに営業時間を過ぎていたので、当日中の連絡は遠慮することに。

で、迎えた翌朝。

ホームページが見られない、メールも使えない。

サポート企業からの電話により例の障害が解消していないことを知りました。すぐにファーストサーバのインフォメーションをチェックしましたが、なにがどうなっているのかよくわからないけど「ただごとではない」という状況が見てとれました。念のため問い合わせフォームから詳細が知りたいとの旨を連絡した上、緊急対応ダイヤルに電話もかけてみましたが案の定つながらず。

特に進展がないままこの問題がネットメディアなど各ニュースで報じられ、世間一般に知られることとなりました。

ネットショップなどコンシューマ向けのサービスを行っている会社にとってメールは生命線です。サポート企業からはホームページは後回しでいいからメールだけでもなんとかしてほしいと懇願されました。

障害が長引くことはわかったので、独自ドメインのメールを復活させるためにファーストサーバ以外のサービスと契約しようと考えました。ところがここでまた問題が。

ドメインを移せない。

サーバーに関わる機能が全停止していたのでドメイン移管も無理でした。結局なんの手も打つことができないまま史上最悪のデータ消失事故へとつながるわけです。

データは資産、ユーザーの自己責任でバックアップを

障害発生から一週間後とか10日後だったと思います。データが消えたとの公表があったのは。

そもそもの原因は予定されていたメンテナンスの際に手違いがあったようですが、偶発的なアクシデントではなく人為的な事故=ヒューマンエラーの部類に入ります。対応に関わった人たちは不眠不休で生きた心地がしなかったと思うので「お疲れさまでした」というのが当時の本音です。

ファーストサーバでネット通販を行っていたある事業者は廃業を決意したという話も聞きました。システムを再構築するにはリソースや資金が足りず、なによりバックエンドの顧客リストなどデータ資産をすべて失ったという虚無感に勝てなかったのかもしれません。

バックアップさえあれば。

幸いなことにローカルに直近のバックアップを保存していたので、すぐにサイトを復旧できました。サポート企業も同じ理由で元通りにできました。細かい設定もあったため1週間以上かかりましたが、最初からやり直すことに比べれば長く語るような苦労はありません。

かれこれ10年以上前の話ですが、このときに学んだ教訓は忘れないようにしています。

バックアップは自己責任。

どんなに文句を言ったところで消えたデータは戻ってきません。むしろデータはお金やノウハウと違って誰でもかんたんにコピーできる資産なので、万が一のためのバックアップを取得しておきましょう。