2023
10.27
二代目は会社を潰せない

二代目は会社を潰せない

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「二代目が会社を潰す」という世襲企業の定説ってありますよね?確かに親子といえども経営手腕のDNAが継承されるかどうかは怪しいもので、絵に描いたようなボンボンバカボンだったら1年以内にブッ潰しそうです。でも「うちのバカ息子が会社を潰しやがった」という創業者の嘆きはなかなか聞こえてきません。どういうことなのでしょうか?

創業者の体験が二代目を「成功の囚人」に変える

みなさんは「成功の囚人」という言葉をご存知でしょうか?過去の成功体験にとらわれることで新しい挑戦ができない思考や状況を意味しています。

成功というとビッグなことを成し遂げるイメージですが、小さな成功体験は誰にでもあります。つまり誰でも「成功の囚人」になり得るということです。

定期テストで好成績を残してきた勉強方法を変えられず受験本番で失敗してしまうとか。コツコツ貯金してきて1千万円も貯めたのに結局使えないまま人生を終えてしまうとか。昔の彼氏との思い出を引きずり続けて新しい恋に踏み出せず婚期を逃してしまうとか。

これまでの考え方・やり方を変えるのは難しいですよね。この方法で上手くやってきたという自負があればなおさらです。また成功体験は受け継がれる場合も多く、その最たる例が親から子への世襲です。

二代目は創業者の成功を知っています。

代替わりを考えているような創業者は自分の会社を立ち上げて事業を軌道に乗せ、従業員の生活を守れるだけの売上と利益を確保しています。ゼロの状態から資金、事務所、社員、顧客、仕入先、データ、ノウハウなどコツコツ積み上げてきたものは少なくないはずです。

それらをなんの競争もなしに丸ごと受け継げるのは二代目ならではの特権だと思います。

親の意向に沿わず家を出る人もいますが、実際に継ぐことを決めた二代目の本音はだいだいこんな感じだったりします。

「就活がなくなってラッキー!」

このくらい楽観的じゃないと敷かれたレールには乗れないのかもしれません。

Let’s現状維持!粛々と経営タスクをこなすだけの日々

で、会社の状態がいいときにバトンを渡されると二代目は「成功の囚人」になりやすいです。

挑戦にはリスクがつきものです。絶対に大丈夫なんて話はありません。もし失敗しようものなら「苦労知らずのボンボン息子が余計なことして」と影でいろいろ言われるのが世の常です。

だったらなにもしない方がいいじゃないかと。

囚人化した二代目は粛々と経営タスクをこなすだけの毎日を送るようになります。言わず動かずのTHE現状維持を貫きます。

Jリーグの監督なんかは成績が悪いとシーズン中でも解任させられたりしますよね。次に契約した監督が大胆なテコ入れができるのはチャレンジしやすい環境だからです。なにかやらなければ現状維持もままならないので、たとえ失敗したとしても挑戦した結果だと受け止められます。逆にいい状態で監督に就任するのはプレッシャーが大きく、上手くいかなかったときの風当たりもハリケーン並みに強いはずです。

もうひとつ「成功の囚人」になりやすい理由が次のような二代目あるあるです。

創業者が会長として目を光らせていたりすると、二代目のチャレンジにいちいち釘を刺してきます。

やる意味がない、どうせ失敗する、お前には無理だ。

社長なのに上からダメ出しを連発されるようなら思考停止した方が気楽です。「はいはい、わかりました」と。親は子どもがいくつになっても親であり、社長になっても親であり続けます。下手に逆らうと会社を追い出されかねないので、小さな野心を押し殺しながらこれまで通り大人しくしているしかないのです。

V字回復のチャンスを与えるか経営の余白を残すか

操り人形のような諦めモードで5年、10年、15年と囚人社長を続けているとまわりが羨ましく見えてきます。宿命を受け入れた自分と違い、友人たちはそれぞれの道でチャレンジしているじゃないかと。

特に起業している人はキラキラ輝いて見えるのではないでしょうか。同じ社長なのに向こうはガンガン攻めていて、こっちは地味に守り続けていて。やがて彼らのインスタから目を背けるようになります。

創業者と二代目の違いはSNSの投稿にも表れるのです。

もちろん守り続けることは社長としての責務であり、今のご時世だと現状維持だけでも大変です。ただやっていてなんか楽しくないと気づいてしまったからには「なんで継いじゃったんだろ?」「今さら考えても仕方がない」と自問自答を繰り返すしかありません。

そう考えると創業家で三代続く会社ってすごいですよね。

さっきの監督の例みたいに今にも潰れそうとか大ピンチのタイミングで会社を継いだ二代目ならチャレンジするしか選択肢がありません。いい意味でやりたい放題です。失敗しても創業者の責任、成功すればV字回復の立役者になれます。テレビ映えするキャラなら「ガイアの夜明け」で取り上げられるのかもしれません。

コロナを乗り越えても物価高に人手不足のダブルパンチ。業種を問わずニッチもサッチもどうにもブルドッグな世の中です。ただ後継者がいなくて廃業または売却を選択する会社が続出する中、二代目が決まっているというのは幸運なことだと思います。

一般的には創業者の年齢的な引退が代替わりのタイミングですが、それがベストとは言えません。かといって潰れそうなときに跡を継がせるのは過酷な罰ゲームです。期待を込めて二代目には創業精神が芽生えるような経営余白を残しつつ、電信柱の影から見守るくらいがいいのではないでしょうか。