2023
10.21
芸歴制限撤廃「R-1グランプリ2024」で夢は生まれるのか?

芸歴制限撤廃「R-1グランプリ2024」で夢は生まれるのか?

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ピン芸人日本一を決めるお笑いコンテスト「R-1グランプリ2024」の開催が発表されました。M-1グランプリやキングオブコントに比べると地味な印象があるこの大会。注目されたトピックが芸歴制限撤廃です。このルール変更によって芸歴11年以上の中堅・ベテランも出場できるようになりました。

M-1とキングオブコントではおじさん芸人が脚光を浴びる

今さら説明することでもないですが、ピン芸人=コンビやトリオではない1人でネタをやる芸人さんのことです。バカリズムさんや陣内智則さん、劇団ひとりさんなどがそうです。

このピン芸人を対象としたお笑いコンテストが「R-1グランプリ」で2002年の第1回から20年以上続いている歴史ある大会です。前年度の第21回大会は田津原理音さんがカードを使ったネタで優勝。当時の田津原さんは29歳とフレッシュ感が際立っていました。理音という名前が平成生まれの証ですよね。そもそも決勝進出者の平均年齢が32歳と若く、そうなった理由に2021年から加えられたルール「芸歴10年以下」という出場制限があります。

瞬発力を求められるスポーツだと10年目はピークかもしれませんが、お笑いは長くやるほど味と深みが出るので経験年数が武器になります。M-1グランプリ、キングオブコントは40歳前後のおじさん芸人が舞台を沸かしているイメージではないでしょうか?

20年近い下積みを経てようやく日の目を見られるかどうかというのが芸人の世界。いつなにが起こるかわからないためか、やめるタイミングを見失いがちです。その象徴が一昨年のM-1チャンピオン、錦鯉さんです。当時の長谷川さんは50歳、渡辺さんは43歳。M-1創設のころには想定していなかった事件だと思います。

R-1に若さを出した結果、視聴率が1桁台に落ち込む

で、R-1は芸歴10年以下というルールにより、毎年上っていたハシゴを外されたおじさん芸人が大量発生しました。最も影響を受けたのが5年連続ファイナリストのおいでやす小田さんです。一方、こがけんさんとのユニット「おいでやすこが」で挑んだM-1では準優勝という快挙を達成。活躍の場を奪われたピン芸人の逆襲劇と相まって、全国的なブレイクにつながりました。

田津原さんのカードネタは構成も見せ方も上手かったのですが、ついていけない昭和生まれの中高年も多かったはずです。準優勝だったコットンのキョンさんは普段からやっているようなコントをピンネタに仕上げていて世代を問わず楽しめる内容でした。全体的に盛況とは言いがたく、ゴールデンタイムにも関わらず視聴率も1桁台と振るいませんでした。

そこでなんとかしようとテコ入れしたのが今回の芸歴制限撤廃です。

おじさん芸人にとっては待ちに待った門戸開放ではないでしょうか。制限期間中にR-1用のネタを数本仕上げていてもおかしくありません。平均年齢だけでなくネタのクオリティも上がりそうな雰囲気です。

急遽訪れたこのビッグチャンスですが、例のアレが不安材料のひとつとして残ります。

「R-1には夢がない」を完全否定できるラストチャンス

昨年、M-1チャンピオンとなったウエストランドの井口さんがネタの中で「R-1には夢がない」と言い切っていました。あくまでもネタですが「R-1でファイナリストになっても優勝してもテレビで活躍している人ってほぼいないよね」という世間の認識を代弁するようなキラーワードでした。

夢がないのはR-1だからなのか、それともピン芸人だからなのでしょうか?

かつてエンタの神様や爆笑レッドカーペットに出てお茶の間を楽しませてくれたのはバラエティ豊かなピン芸人たちです。リズムネタ、歌ネタ、フリップネタ、モノマネ、一発ギャグ。これらのネタ番組に出れば売れると信じてキャッチーなキャラとネタを追い求める日々。流行に揺さぶられ方向性を見失う例も少なくありませんでした。

ダウンタウンさんに憧れ、松本さんが書いた「遺書」をバイブルとしていた芸人志望の若者はコンビを組み、M-1やキングオブコントといった賞レースのファイナリストを第一目標としていました。同じくピン芸人はR-1という優等生ルートに活路を見出しますが、優勝後のサクセスストーリーまでは描きにくかったように感じます。

R-1チャンピオンでありながら活躍の場を広げられなかった中山功太さんや三浦マイルドさんのイメージが強いのかもしれません。

孤高のピン芸人は売れるのも、売れ続けることも難しいです。

コンビの場合は作家とパフォーマー、策士と戦士のチームプレーで高みを目指せます。2人分の人生経験を蓄積しているので平場のトークにも困りません。かたやピン芸人は1人でやれることに限界があります。舞台でもテレビでもコンビと比べて地味に見えてしまうのでしょう。

ただ、ちょうどコロナ禍と重なった空白期間に歴史を塗り替えるようなお笑いスキルを身につけたピン芸人だっているはずです。果たしてR-1ドリームはあるのかないのか。今回の結果で夢の有無に決着がつきそうです。

おじさん芸人が嵐を巻き起こす「R-1グランプリ2024」に注目しましょう。