2023
10.15
もう閉店するしかない!?時給1,500円時代を迎える店主のジレンマ

もう閉店するしかない!?時給1500円時代を迎える店主のジレンマ

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人手不足は深刻な社会問題です。特に厳しいのが飲食店で「いくら出せば来てくれるのか」と。時給1,000円の壁はないに等しく現在は1,200円前後での攻防が続いています。地方でも時給1,500円が普通になる日はそう遠くないと思います。従業員として働く人にとってはウェルカムな風潮ですが、雇う側としてはギリギリ継続か閉店ガラガラの瀬戸際だったりします。

一度上げた時給は下げられないから悩ましい

店主さんが求人募集をかけるときに葛藤するのが「時給をいくらにするか?」だと思います。コロナ前だと時給900円台でもギリギリ面接に来てくれる人もいましたが、いろいろ復活してきた今は1,000円~1,200円ぐらいが相場になっています。「これ以上はもう出せない」という上限ギリギリの時給を提示してもファストフード、ファミレス、牛丼チェーンなど近隣のお店に奪われてしまいます。

どういうことでしょうか?

シンプルに働きやすいかどうかです。ファストフードもファミレスも牛丼チェーンも仕事がマニュアル化されているため「自分でも大丈夫」という安心感があります。ついでに求人広告のイメージも明るいので深刻な人手不足の中でもまだ有利な状況です。

個人店はどうかというと求職者にとってTHEブラックボックスです。実際に職場に入ってみなければなにもかもわかりません。お店ごとにルールややり方は違うでしょうし、なによりオーナーと上手くやれるかどうかは大きな不安材料です。時給が同じならマクドナルドやガストに目が向くのも当然だと思います。

ならばもっと時給を上げればいいのかというと、そう単純な話ではありません。

新規スタッフの募集で時給を上げたら、既存のスタッフの時給も上げなきゃいけなくなります。「なんで新人が俺より100円高いわけ?」とならないように逆転現象が起こらないように配慮するのが原理原則です。

現状維持か時給アップか。

ここ20年で最低賃金は1.5倍近く上がっています。物価も上がっていますが世の中の時給アップの流れにはもう抗えない雰囲気です。

仮に100円アップしたとしましょう。オーナーとスタッフ2人で回しているとして、6時間勤務として100円×6時間×2人で1日当たりの負担増は2,400円です。営業日が25日あれば2,400円×25日で6万円と週に2~3日のアルバイトならもう1人雇えそうな金額になってしまいます。

それに一度上げた時給は下げにくいというか下げられないですよね。

プロ野球選手なら成績で年棒が下がったりしますが、時給は常識レベルで下方修正できない数字です。時給を上げるにはルビコン川を渡るような覚悟が必要なのかもしれません。

給料が2倍になっても人の働きは変わらない

さて、時給を上げたら上げたでこういうジレンマも出てきます。

ところで時給なりの仕事をしてくれるのかと。

残念ながら1,000円から1,500円に上げたからといって1.5倍増しの働きをしてくれるわけではありません。馬ならニンジンをぶら下げればダッシュしてくれそうですが、人間は急に2倍、3倍の能力を発揮したりしません。もちろん時給アップでやる気が出て、接客態度がよくなったりテキパキ動いてくれることはあると思います。

が、人間は慣れる生き物です。

特別なことが当たり前になり「こんな安い給料じゃやってられん」と言いはじめるのも時間の問題です。店主さんにとっては人件費だけが重くのしかかるだけではないでしょうか。

では給料以上に働いてくれる「いい人」がゼロかというとそんなことはありません。ごく少数ですがいることはいます。ただ悲しいことに「いい人」はさらに高待遇なところに行ってしまいます。

そもそも非正規のアルバイトだと飲食店は不人気です。重労働の長時間労働に給料未払いとか。パワハラ、モラハラ、セクハラといったハラスメント地獄。最近ではお客さんから理不尽なクレームを受けるカスハラ(=カスタマーハラスメント)という新たな問題にも直面しています。数あるサービス業の中でも飲食店はカスハラのターゲットにされやすいのです。

雇う側にも心配の種はゴロゴロあります。バイトテロに売上横領、元従業員による窃盗や暴行までよく耳に入ってきますよね。雇用関係より根が深いのが人間関係です。

だったら人件費を丸ごとカットして合理化しよう考えるも、注文用タッチパネル、配膳ロボット、セルフレジなどシステム導入の負担は軽くありません。

いずれにしても今までどおりが通用しない状況であることは確かです。

お金だけでいい人が来てくれるほど甘くない時代に

人を雇う余裕がなければ営業時間の短縮、席数を減らすなど縮小にシフトするしかないのでしょうか。若い世代の労働人口は減り続けているのですから、頭もやり方も切り替えなければなりません。ワンオペや家族だけで対応できるようにするとか。後ろ向きな考え方ですが、これはこれで悩みがひとつ消えます。

いやそういうわけにはいかないと。

時給は上げるからいい人に来てほしいというお店もあると思います。

では、どうすれば求人が上手くいくのでしょう。

第一に受け身のままではなにも変わりません。

そもそも人手不足に悩む店主さんほど情報発信に積極的ではありません。前述したようにチェーン店や有名店でもない個人店のほとんどはブラックボックス、つまり謎の店です。客として行く分にはミステリーグルメツアーを楽しめそうですが、自分が働くとなると内情を把握しておきたいものです。求人サイトの情報だけで人を集められるほどノホホンな時代ではありません。

今さらと思わずにSNSをフル活用してみませんか?

いい情報にはお金以上の価値があります。では求人を考えた場合にどういう情報がいいのかというと「求職者が知りたいこと」です。釣りをするときは自分の好物ではなく魚が好きなエサをつけますよね。

新メニューできましたよ、キャンペーンやりますよ、月曜日は臨時休業ですよ。

こういうのはお客さん向けなので一旦置いておきましょう。

繰り返しになりますが個人店は謎だらけです。であれば謎を解き明かすようなヒント情報がいいのではないでしょうか。お客さんからは見えない部分です。オープンキッチンでも見えないところはたくさんありますよね。

SNSではいいところだけを公開したくなりますが、キラキラハッピーだけが人の心を動かすわけではありません。むしろ逆です。字が汚いとか、絵が下手だとか、計算を間違えるとか、パソコンが使えないとか。誰かの苦手は誰かの得意分野だったりします。じゃ手伝ってあげられるかな、と思わせれば投稿した甲斐があるというもの。

人同士はもちろん、お店と求職者も小さなヒントがつながりを持つカギです。悩んでいてもなにもはじまりません。時給だけでなく情報もアップしていきませんか?