2024
03.07
令和生まれの昭和ドラマ「おいしい給食」という新時代劇

令和生まれの昭和ドラマ「おいしい給食」という新時代劇

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ふてほどことTBSドラマ「不適切にもほどがある!」が話題になっていますが、宮藤官九郎さんならでは面白い仕掛けが満載ですよね。平成生まれの人たちにとっては新感覚の時代劇といった感じでしょうか。設定もテーマもまったく違いますが「おいしい給食」もおすすめです。

給食が主役の人気ドラマ、昭和オマージュもいろいろ

給食特化型の学園コメディ「おいしい給食」は2019年にシーズン1、2021年にシーズン2、2023年にシーズン3と1年おきにテレビ神奈川、TOKYO MXなどで放送された人気ドラマです。

主演は多彩な演技で人々を魅了する市原隼人さん。給食のために学校に行っているといっても過言ではない給食至上主義の中学教師・甘利田幸男(あまりだゆきお)を好演しています。ドラマの舞台は1980年代の中学校なので、時代背景は過去に戻ったときの「不適切にもほどがある!」と共通していますよね。

学校なので職員室のシーンがよく出てきます。パソコンもプリンタもなく、連絡手段は電話とFAXと郵便のみ。先生方もどこかのんびり仕事をしている様子です。

田舎の公立中学校という設定だからなのか、登場する生徒のほとんどが純朴そのものです。金八先生、教師びんびん物語、GTO、中学聖日記みたいに事件らしい事件が起こることはありません。仮になにかあったとしてもすべて給食絡みのトラブルなので温かい湯気が立つ程度です。

そのほか給食のおばさん役にいとうまい子さん(不良少女と呼ばれての曽我笙子)、教育委員会の海坊主役に直江喜一さん(金八先生の加藤優)が出演しているなど昭和ドラマオマージュも。相模悪竜会の会長も腐ったミカンもアラ還ということで時代の流れを感じます。

このドラマのメインは給食です。毎回サブタイトルにもなっている献立がアップで映し出され「今日は焼きそばか」と甘利田先生がつぶやき、そのイメージを膨らませるところから物語が展開していきます。

1980年代の学校給食には「うまそげ」な要素しかない

学校では食前にみんなで校歌を歌うという習慣があります。ドラマの名場面のひとつで、甘利田先生は校歌のリズムに乗りながら狂ったように全身をくねらせます。ウキウキダンスとも呼ばれていて、市川隼人さんの本気を垣間見ることができます。

手を合わせてください。いただきます!

画面越しに給食の匂いがプンプンしてきます。おかずを舐めるように見回して、いざ実食。食べっぷりが想像の斜め上で「おいしい給食」というタイトルにウソはありません。アルミ食器と先割れスプーンがこすれる音に咀嚼音、甘利田先生の心の声、ASMRで聴けるレベルです。

最後に牛乳を飲み干して、完食。

「今日も仕上がった」

といったところでもうひと展開あります。甘利田先生のライバルである男子生徒、神野ゴウが独自の給食アレンジを披露するわけです。くじらの竜田揚げドッグ、揚げパンのチーズフォンデュ、筑前煮で炊き込みご飯などなど。

「うまそげじゃねーか!」

給食博士のようにうんちくを語りながらも普通に食べてしまった甘利田先生は圧倒的な実力差を見せつけられ、そのまま椅子や床にダウン。にもかかわらず、クラスの注目を浴びることはなく淡々と給食の時間が過ぎていくという不思議な世界観がこのドラマの持ち味です。

参考までに甘利田先生の特徴を下記にまとめておきます。

30代、独身、白いワイシャツ、ネクタイ、黒ぶちメガネ、座るときは内股、基本的に小声、怒ると声が大きい、給食が一日のピーク、母親の料理がまずかった、お酒と飲み会が苦手、コーヒーに砂糖を全部入れる、教育委員会に目をつけられている、輪島塗のマイ箸、ハンサムの基準はアランドロンともみあげ。

昭和世代には懐かしく平成世代には新しいコンテンツ

劇中には1980年代っぽいものがいろいろ登場します。

変形学生服、ソックタッチ、ロケット鉛筆、フラワーロック、伊藤博文の千円札など。土曜日に授業があったり、なにもかも手書きだったり、エアコンがなかったり、百葉箱が設置されていたり、下校途中に駄菓子屋があったり。

もちろん給食にも昭和らしさが出ています。

アルミ食器、先割れスプーン、ソフト麺、ビン牛乳。

地域差こそあるもののミルメークはまだ現役のようです。

今やテレビのほかスマホ、タブレット、パソコンと視聴デバイスがいろいろあって、ドラマはひとり一人で楽しむのが当たり前になっています。家族みんなで楽しめるドラマって本当に少ないですよね。

その点「おいしい給食」は極めて希少なコンテンツなのかもしれません。

時間の流れがやたらと速い昭和・平成・令和に対して、給食文化はゆるい変化を経て現代に受け継がれています。どのくらい変わっているのか変わっていないのかよくわかりませんが、今日も全国各地の学校で子どもたちはおいしい給食を食べているはずです。

そして2024年5月24日、劇場版最新作「おいしい給食 Road to イカメシ」が公開されます。劇場版はシーズン1とシーズン2の続きストーリーとしてこれまで2本公開されてきました。今回はシーズン3がベースなので舞台は函館。ということでのイカメシ登場ですが「そんなの、うまいに決まっているだろ!」と。

劇場版ではドラマに収まりきらなかった甘利田先生の意外な一面が見られるので楽しみですね。