01.30
YouTubeの再生回数が伸びないのは「番組化」されていないから
オワコンとの噂も少なくないYouTubeですが、これからチャンネルを立ち上げようとしている方もいらっしゃるかと思います。初動画は勢いでアップできそうですが、すぐにぶつかるのが登録者数と再生回数の伸び悩みです。ということで数字の右肩上がりを約束するYouTubeチャンネルの「番組化」について考えてみましょう。
マンネリだから長続きしているテレビ番組
結論からいうと目指すべきはYouTubeチャンネルの「番組化」です。長続きしているテレビ番組は世間のトレンドを追わなくても視聴率と支持率が安定しています。これを素直に取り入れるとYouTubeという弱肉強食のレッドオーシャンの中でも元気に長生きできるという話です。
相棒という20年以上続いている人気刑事ドラマがありますよね。一度も観たことがない人でも名前ぐらいは聞いたことがあるかと思います。1話完結の1時間番組ですが、大まかな流れは次のとおりです。殺人事件が起こり、事件現場に特命係が現れ、捜一の刑事に煙たがられ、鑑定と捜査が行われ、特命係が勝手に動きはじめて、いかにも怪しい容疑者が浮上して、杉下右京の推理がビンゴで、意外な人物が真犯人として逮捕され、事件は無事に解決して、なじみの小料理屋で乾杯。
被害者、犯人、動機、証拠など中身は毎回異なるものの外枠のパターンはいつも一緒です。なぜに人気なのかというと杉下右京こと水谷豊さんほかキャストに魅力があるのはもちろんですが、このワンパターンこそが長寿番組の秘訣だったりします。
「徹子の部屋」に「新婚さんいらっしゃい!」に「キユーピー3分クッキング」に「朝まで生テレビ!」など。共通するのは想像以上でも想像以下でもないということです。ゲストとおしゃべり、新婚夫婦とおしゃべり、3分で家庭料理をつくる、時事問題で激論を交わす。すごく見たいわけじゃないけどなぜか見ている番組であり、見たことがない人でもなんとなくイメージできるというのがポイントです。くくり芸人でおなじみのアメトークも放送開始から今年で20年目を迎える長寿番組ですから、しっかりテレビ史に残りますよね。
こうしたワンパターンを5年、10年と繰り返してマンネリ化したころ、番組は視聴者に安心感を伴ったコンテンツを提供している状態になっています。
披露宴は番組化されているから安心感がある
釣り系とか鉄道系とかゴルフ系とか。大食い系とか料理系とかキャンプ系とか。ニュース系とかカップル系とかモノ申す系とか。とにかくなんとか系YouTuberと称される人たちは、ある種のパターンを手に入れることで登録者数と再生回数を右肩上がりレーンに乗せています。
オープニングで今回のテーマを発表して、テロップ付きでなんやかんやとやって、エンディングでチャンネル登録とグッドボタンをお願いするという流れで、時間も10分とか20分とか毎回きっちり揃えていますよね。と、ここまでは見たまんまですが、メインであるなんやかんやの部分も枠を外れないようにつくられています。
これって完全に番組化していますよね。
暴力や性描写以外ならなんでもOK、制約ゼロの自由世界YouTubeというプラットフォームにおいてガッツリ型にはまった動画が量産されているのです。
それを見ているわたしたちの心境はどうなのでしょう?
お呼ばれして出席した知人カップルの披露宴を思い出してみてください。
会場に着いたら受付で記名してご祝儀を渡すじゃないですか、指定されたテーブルについてメニューとかを見るじゃないですか、聞いたことがあるようなないようなバラードとともに新郎新婦が入場してきますよね、わざとゆっくり歩く2人を拍手で迎えますよね、この道一筋20年みたいな司会者が進行して、どこの誰だかわからない人たちの祝辞が続いて、早くしろよと思っていた乾杯のあいさつが行われて、バカ高そうなケーキにナイフを入れて、嫁が旦那にアーンと食わせようとするもこれがなかなかの大盛りで旦那が「いやいや」と苦笑いしながら受け入れて、ご歓談という場つなぎの食事タイムを経て、シレッと抜けていた新婦が着替えて戻ってきて、テーブル上のキャンドルに着火されて、期待以上でも期待以下でもない余興が続いて、お涙いただきマンモスの手紙が読まれて、悪酔い寸前の旦那があいさつして、退場ついでに2人に見送られて、かさばる引き出物を手に帰るなり2次会の会場に移動すると。
出席者のひとりとしてちゃんと流れに乗りますよね。次から次へと巡ってくるベタ展開に合わせながら新郎新婦ほか大勢とまとまった時間を共有するのがTHE披露宴です。
お金も時間もかかる披露宴に気負わず参加できるのはパターンが概ね決まっているからです。なにが行われるのかよくわからないミステリアスなイベントだと招待状を受け取っても「はい」に〇を付けにくいですよね。もしライアーゲームだったら地獄です。
パーティーやイベントに限った話ではありません。わたしたちはコンテンツにおいても刺激より安心を求めているのではないでしょうか。なにもかもわかりきった上で笑ってしまうドリフの大爆笑なんかが好例だと思います。作り手としてはデバイスがスマホになろうとも家族団らんのお茶の間に届ける意識が大切なのです。
欲を出さなければ3年後に好結果を出せるはず
YouTubeチャンネルは口コミで人気に火がつくこともあります。しかしながら、もしあなたが誰かにこのチャンネルを見てほしいと思ったとき「伝えやすさ」が備わっていないと上手い具合に推しを紹介できません。
伝えにくい理由は単に複雑だからというわけではなく、前述のような番組化がなされていないからです。近年、タレントやアスリートなどたくさんの有名人がYouTubeに参入していますが「○○さんがやっているYouTubeだよ」と、ひとこと言えば見てみようとアプリを開く人もいることでしょう。
逆に無名チャンネルを登録してもらうには、どういう動画が上がっているのかを2~3秒で説明する必要があります。
競馬予想に命をかけている占い師とか、幕末の志士を降ろし続ける霊媒師とか、場末のスナックの名物ババアを紹介するとか、ゴルフ経験ゼロのJKをツアープロに育て上げるとか、3023年から令和にやってきたタイムトラベラーとか、金持ちボンボン少年の大人買い生活とか、100日後にホームレスになる億万長者とか、心霊スポット限定のソロキャンパーとか。
動画一本の話ではなくチャンネルそのものが番組化されていなければサラッと説明できません。
番組化することのメリットは見えてきたと思いますが、初回からパーフェクトを目指すとスタートが遅れるどころか、考えているうちにやる気が失せてしまいそうです。
なので、やると決めたらなるべく早く動画をアップしてください。とにかく踏み出すことが重要なので1発目はもうなんだってOKです。
問題はその後の考え方です。どうしてもバズらせようと欲を出しがちですが、求めるべきは目先の数字ではなく3年後の好結果です。むしろバズらない方が身のためといえます。
動画をアップして視聴者の反応に一喜一憂することなく、パターンを手に入れ番組化することだけに頭を使いましょう。