2023
01.14
オーディブルな記事を考えているうちに気づいたセールスライティングの本質

オーディブルな記事を考えているうちに気づいたセールスライティングの本質

WRITING

読むという行為は目で活字を追うことですが、書き手としてはもうひとまわり想像の範囲を広げたいところです。なんといっても動画コンテンツ全盛の令和ですから、目だけでなく耳でも情報をキャッチすることが増えていますよね。そこであえて着地点を気にせず「聞きやすい記事とはなんなのか?」についてじっくりまったり考えてみましょう。

耳だけで楽しめるコンテンツが増え続けている

以前、取材した女性の中にバリバリ働きながら3人の子どもを育てているワーキングママのAさんいまして、話を聞いたところ早朝から深夜までバッタバタの超多忙な日常であることがよくわかりました。3分あれば洗濯物を干せるとか、5分あればお弁当をつくれるとか、とにかく国民的タレント並みのハードスケジュール。そんな中、仕事と育児を両立させるためにあらゆる時短術を駆使していました。

Aさんの時短術のひとつに「Kindle(キンドル)」がありました。スマホやタブレットで読書を楽しむことができる定番アプリです。どんなに忙しくても読みたい本は絶対に読むというAさん。iPhoneの読み上げ機能を使い、たとえば夕食の準備をしながら1.5倍速で本に耳を傾けるそうです。

実際に聞いたことがある人はわかると思いますが、読み上げ機能の通常速度ってわりとゆっくりなんですよね。1.5倍速だとしゃべくり漫才のマシンガントークぐらいになるので案外聞きやすかったりします。試しに2倍速にしてみると昔懐かしいカセットテープの早回し状態でした。ギリ聞き取れたとしてもこれでは頭の理解が追いつきません。

音楽以外で聞くといえばラジオですが、最近は語り系YouTuberとか対談動画とか画面を見なくても耳だけで楽しめるコンテンツが増えています。歩きながら、電車に乗りながら、車を運転しながら聞きたいコンテンツを聞く人も多いでしょうし、作業用BGMとしても重宝します。

一方、Aさんのように普通のKindle版ブックを読み上げ機能で聞くときは機械的な人工音声です。つまり「ワレワレハウチュウジンダ」とカタカナ表記が似合う抑揚のなさに加えて「、」や「。」で区切られていない文章は聞き取りにくいものです。Amazonに「Audible(オーディブル)」というサービスがありますが、こちらはプロのナレーターさんや声優さんが読み上げているオーディオブックなので、人間らしい生身感があります。

ただ読み聞かせの朗読が苦手な人にとっては、ちょっとしつこいかなという印象です。聞き取れるけどクセが強いというかもっとフラットに読んでほしいというか。女性がいいとか男性がいいとか。好みの声かどうかという部分も大きいです。

聞きやすい文章のポイントは呼吸していること

聞きやすい記事=耳にやさしい記事をつくるためにも、読み上げのコツについて考えてみましょう。おそらくお子さんに絵本を読んであげるとき以外は意識しないことですよね。

どういう点に注意すればいいのでしょうか?

声質はどうにもならないことですし、速度はアプリの機能で調整できます。ということで、一番大切なのは書かれている内容を理解した上での「間」の取り方です。

間とは無音状態でON/OFFでいえばOFFです。話している途中で3秒の間があると聞いている人は「え、なに?」ってなるはずです。早口でしゃべっているときなら1秒でもそうなります。結果発表のドラムロールでは最後に必ず間があって「これから大事なことを言いますよ!」という合図になっています。

そもそも人間は呼吸をしなければならないため、無意識のうちに間をつくっています。いわゆるブレスです。息苦しくならないように文節やセンテンスの頭で勝手にブレスが入ります。結果的にそれが人間らしい自然な間となるわけです。

この間を記事に反映させるには「句読点を打つ」と「改行を入れる」の2つの方法があります。どちらも読み上げ機能で拾ってくれるため、適材適所で打ったり入れたりしていけば問題ありません。

ただ、それだけだと聞きやすくならないのはみなさんがご想像のとおりです。

読むにしても聞くにしても感情的である方が伝わる

WEBコンテンツとして公開されている記事のほとんどは口語体(=話し言葉)なので、わりと耳障りのいい文章が多く並んでいるはずです。

さらに「そうですよね?」や「と、思いませんか?」みたいな共感を求める問いかけが入ってくるとより耳フレンドリーな記事に近づきます。やり過ぎるとネットワークビジネスの勧誘っぽくなるので要注意ですが。

たとえ聞き心地はよくてもこれが長々と続くとなんだか眠くなりそうです。そこで共感を求めると同時に強めのメッセージを盛り込んでいくとか、僕はこう考えている、わたしはこう信じているという主体性を感じさせることで、BGM以上のコンテンツにレベルアップできると思います。

ひとつ懸念されるのは「難しい話を難しく語る」でおなじみの政治家の演説みたいになりかねないことです。だったら耳にガンガン寄っていく言葉を選ぶしかないと。

噂に過ぎない → バカだけが信じる話ということで
非常に難解で → マジで意味わかんねーからさ
期待が高まる → ワックワクがどうにも止まらなくて
円安が進んで → ジャパニーズイェンがダダ下がりのゴリ落ちで

というカジュアル変換を行うと脳に直接伝わりやすくなるような気がします。

こういうくだけた文章をWEBで公開するのはどうかという意見もありそうですが、YouTube界隈では普通のことですし、伝えるためのパフォーマンスを最優先するなら言葉に踊ってもらわなければなりません。

相手の心を動かすにはこちらも感情で訴えるしかないわけで、セールスライティングでも既存テクニックを丸ごと排除したダイレクトでわかりやすい言葉を並べるのが最短ルートだと思いました。