01.21
面白そうなエピソードトークは動画編集の要領で最適化する
せっかく面白い体験やめずらしい体験をしたのに上手く話せないのはもどかしいですよね。いわゆるエピソードトークですが、しゃべるのが苦手な人ほど話すべき内容がまとまっていなかったりします。そこで今回はエピソードトークの最適化について考えましょう。動画編集の要領でやればバッチリです。
体験談を細かく区切ったものを時系列で並べてみる
エピソードトークの最適化は体験を整理することからはじめます。ある体験をシーンごとに区切って、さらに時系列で並べるという作業です。
下記の例は実際にあったできごとですが、長さもちょうどいいのでこれをサンプルにします。
・風邪で3日間寝込んでいた。
・ずっとなにも食べていなかったため、死ぬほどお腹が減っていた。
・冷蔵庫を開けたら空っぽだった。
・無性にケンタッキーが食べたくなった。
・フラつきながらも近所のケンタッキーまで歩いていった。
・お店に着くと入り口におじさんが立っていた。
・すみませんと頭を下げながら前を通ったら無視された。
・その顔をよく見るとカーネルサンダースだった。
ポイントは行単位でもイメージが伝わることです。たとえば最初の「風邪で3日間寝込んでいた」では布団の中で辛そうにしている姿が目に浮かぶと思います。以降も同様で体験の言語化によって、ストレートに脳内再生できるようにしています。
つまり言葉によって自分が記憶している映像と同じものを相手に見せるということです。
ひとつずつバラしているせいか途中で「ん?」という部分も出てきますが、そこは次の作業でまとめます。
つなぎ合わせたあとは再生と修正を繰り返すのみ
続いて自分の口で流暢に話せるようにシーンをつなげていきます。切った素材をつなぎ合わせるというのは動画編集と同じ要領ですね。
編集作業の結果はこんな感じです。
「以前、ひどい風邪で3日間寝込んでいたことがあって。まーなんとか回復したもののずっとなにも食べていなかったから死ぬほどお腹が減っていて。で、冷蔵庫を開けたら空っぽでなんにも入っていなくて『あー腹減ったー』と思ったときにパッと頭に浮かんだのがケンタッキーで。そこからもう無性にフライドチキンが食べたくなっちゃって、近所のケンタッキーまで歩いて行って。病み上がりなのでフラつきながら。ようやく店に辿り着いたら入口のところになんかおじさんがいて。『邪魔くさいなー』思いながらも前を通るときに『すみません』って頭を下げたらちょっと無視された感じになって。こっちもイラッとしてその人の顔をよく見たら、カーネルサンダースでした」
ゆっくりしゃべって50秒、わりと早口で40秒くらいでしょうか。こういうのは1分以内に収めたいのでOKとします。比喩や装飾、つなぎ目のところとか口調とかは自分が話しやすいように手を加えています。つじつまが合えばシーンの前後を入れ替えちゃっても構いません。
注意したいのは読むための原稿ではないということです。このようなショートストーリーがあって、映像のように何度も脳内再生しながら、足し算・引き算の修正を入れていく感じです。
ただこれだとウケるための準備が整っていないのでラストの仕上げ作業に入ります。
ウケるためのプロローグ、スベったときのエピローグ
よく芸人さんが「○○という話なんですが」と冒頭に一文を付け足すことがありますよね。
不思議な縁ってあるものだなという話なんですが、親の言うことは聞くべきだなという話なんですが、多様性ってこういうことなのかという話なんですが。
なんとなく付け足しているわけではなく、これをフリとしてオチにつなげるような伏線回収の目論見があります。
たとえば映画の冒頭に次のナレーションが入っていたら見方が変わると思いませんか?
「これは実話である」
エピソードトークでもいきなり本編に入るのは不自然なので、プロローグ的なひとことはあった方がいいです。今回のサンプルだとこのように入るのが正解になります。
「あいさつするときは人の目を見なさいという話なんですが」
ちゃんとフリが効いていますよね。
ちょっとした失敗談を面白おかしく話したいわけです。なので、あえて逆方向の真面目そうな、いかにも校長先生が言いそうな導入にします。お笑いの基本、緊張と緩和というやつです。話の前後に高低差があると聞き手の感情を大きく揺さぶることができます。
もう終わりにしたいところですが、せっかくなので念には念を入れましょう。
最後にスベったときのリスク回避を用意しておきます。
どんなに上手く話せたとしても、その場の雰囲気やタイミングでスベってしまう可能性はゼロじゃありません。ということで、あらゆるエピソードトークに使える汎用的なスベリ対策をひとつ。万が一のときのエピローグみたいなものです。
スベってしまったときは少し間を空けてから次のように付け加えましょう。
「この話をすれば『絶対にウケるから!』と〇〇に背中を押されたのですが、世の中に絶対はないということがよくわかりました」
〇〇は社長、上司、先輩、父、母、兄、姉、夫、妻、先生、新郎、新婦などにその場に相応しい人物を入れてくださいね。