10.07
お客さんとのなんとも言えない距離感を「トリセツ」で埋めてみる
どんなに大事な話でも伝え方によってちゃんと理解してもらえなかったり、まったく聞く耳を持ってもらえなかったりと人間同士のコミュニケーションとは本当に難しいなと思う今日このごろです。WEBコンテンツも「うんうん」と熟読してもらえるかどうかは伝え方次第。中身より優先順位が高いといえます。そして反面教師的に参考にしてもらいたいのがあの取扱説明書です。
上手く説明できないことはたくさんある
西野カナさんの「トリセツ」を覚えていますか?男性になかなか理解してもらえない女性の気持ちをストレートな歌詞で綴った2015年のヒット曲です。
トリセツ=取扱説明書は家電によく付いてくるイメージですよね。昔の人はマメに読んでいたのかもしれませんが、最近はどうでしょう。たぶん読むのが面倒なのでとりあえず使ってみる派が大半だと思います。そもそも取扱説明書を読まなくても普通に使える家電が多く、詳しい説明が必要なときはネットからダウンロードしてくださいという意味でメーカーサイトのURLが記載されているものです。
そういえばはじめてiPhoneを購入した高齢の方から「なにをどうすればいいの?」と電話がかかってきて、普段使っている自分がアレしてコレしてと直接教えていました。確かにはじめてiPhoneと向き合ったときは「さてどうする?」だったと記憶しています。取扱説明書が見当たらないときもそうですが、わからないことは家族でも友人でもネット上の識者でもいいから詳しい人に聞いた方が早いのです。
一方でどこの誰になにを聞いていいのかよくわからない話も多く、西野カナさんのトリセツはまさにそれです。トリセツのおかげで余計なトラブルを避け、良好な関係を築くことができるのです。
取扱説明書は読むのも書くのも楽しくない
たとえばお店とお客さんの意見の食い違い。たびたび問題になってメディアで取り上げられますよね。お店としてはこういうつもりだったんだけどお客さんはそう理解していなかったとか。お店の肩を持つつもりはありませんが、得てしてお客さんは知識不足による勘違いをしがちです。で、言いはじめたら引っ込みがつかず、なりたくもなかったクレーマーと化してしまうのです。
そうならないように店頭やホームページで説明するのですが、悲しいことにあまり見てもらえないんですよね。詳しく書けば書くほど見てもらえません。取扱説明書を読まないのと同じ理屈です。とりあえず利用してみればいい、わからなかったら聞けばいい。そして言った言わないのトラブルに発展すると。店内で起こるトラブルはだいたいこのパターンです。
ところで取扱説明書ってどんな人が書いていると思いますか?
ほとんどはメーカーの開発担当部署にいる人ですが、専門的知識を持つテクニカルライターなど外部に委託する場合もあります。そして取扱説明書を書く仕事は楽しくないはずです。読まれないことを前提に長々と細かい文章を書き続けるわけですから。着てはもらえぬセーターを編み続ける北の宿の中の人の心境です。
説明責任を果たすために取扱説明書は必要ですが、それとは別にちゃんと読んでもらえるトリセツがあればお客さんとの距離感も縮まりそうです。
一番詳しい人ほど伝え方を工夫してほしい
トリセツと取扱説明書との大きな違いは伝え方です。難しいことを難しい言葉の羅列で示すのではなく、本家「トリセツ」のように歌にしたり、動画にしたり、マンガにしたり、クイズにしたり。野菜嫌いな子どもに気づかれないように細かく切ってニンジンやピーマンを食べさせるような感じです。
で、わりとすぐにできるのは文章ベースのコンテンツをつくることです。
お店のトリセツ、サービスのトリセツ、店主のトリセツ、スタッフのトリセツ。駐車場や自動ドアのトリセツがあってもいいでしょう。いずれにしても面白い読み物として仕上げることがポイントです。
それに近いのが赤の他人のレビューです。メーカーの取扱説明書は読まないけど人気YouTuberの説明動画は見るとか。商品説明は読まないけど購入者の使用レビューは参考にするとか。お店の自己紹介は読まないけど食べログの評価はチェックするとか。いずれも客観的事実ですが、少なからず個人の感想が含まれているため、やはり自主的に発信するのがベストです。一番詳しいのはお店の中にいる人なのですから。
やたらと説明が多いけどいちいち面白い。
というコンテンツは書いている人が楽しまないと生まれないですし続きません。SNSの運用にもつながる話ですが、今日まで取り上げてこなかったところに目を向けるのがトリセツのファーストステップです。