2024
07.03
「わたしのことだ」と思わせるコンテンツ

「わたしのことだ」と思わせるコンテンツ

CONTENT MARKETING

群像劇のドラマや映画で自分に似ている登場人物を見つけることがあると思います。顔など外見のことではなく性格とか生き方とかクセとか。もし見つけたときはその人物の言動と行動に「わかるわかる」と共感しながら見入ってしまうはずです。今回はそんなコンテンツをつくりましょうという話です。

歌詞に心を打たれるのは自分の人生と重なるから

音楽の楽しみ方は人それぞれです。曲が楽しい、歌詞が面白い、PVが独創的。最近はTicTokとの相性も見逃せないポイントで、SNS経由で新しい音楽を知ることも増えてきました。

そんな中で心に深く刻まれている歌詞ってありませんか?

シンガーソングライターは特にそうなのかもしれませんが、実体験にもとづいている歌詞が多いと聞きます。青春時代の思い出、夢と希望、挫折に葛藤、互いの気持ちが通じ合ったりすれ違ったりの恋愛物語。若いアーティストのみなさんは学生のときのエピソードに曲をつけて歌っていたりするものです。

あとは友だち、恋人、両親や兄弟など近しい人の経験談でしょうか。もちろん想像も含まれているはずです。それでもリアリティのある歌詞に仕上がるのはプロならではの才能なのでしょう。

誰かの人生の一部を切り取ったような歌詞だからヒットするとは限りませんが、ふと思い出してしまうような一節には心を動かすパワーがあります。

理不尽な理由で上司に叱られ、先輩に残業を押し付けられ、オフィスにひとり取り残され、会社を出たのは23時過ぎ、ラッシュの終電に駆け込み、駅のホームに押し出され、いつものコンビニに立ち寄れば、大好きなロールケーキは売り切れ、外は冷たい雨が降り出して、スマホに田舎の母からメッセージ、都会に疲れたらいつでも帰っておいでと、心とは裏腹のスタンプを返して、もう少しだけ頑張ってみようと、できたての水たまりにそうつぶやいた。

と、こんな日もあるだろうし、こんな歌詞もありそうですよね。

「わたしのことだ」と。

自分と重ね合わせることでその歌詞は深みを増し、曲もアーティストも含めてさらに好きになっていくわけです。

詳細なストーリーはコンテンツに使いやすい濃厚素材

人になにかを訴えるという意味では歌詞もコンテンツも同じです。歌詞もコンテンツのうちですが、ここでのコンテンツはマーケティング目的のそれとしておきます。

ユーザーの心情に寄せたコンテンツをつくるときは「たぶんこうだろう、きっとそうだろう」とイメージを膨らませます。

たとえばゴルフスクールを探している若い女性がいるとしましょう。コースデビューでボロボロだった、練習場に行ってもまったく当たらない、YouTubeのレッスン動画は難しすぎる。このくらいはすぐに思いつきそうです。

目いっぱい想像してみましょうか。

半ば強引に誘われた社内コンペ、ゴルフなんてやったことがない、そもそもスポーツが苦手だ、運動会も体力測定も大嫌いだった、そんなわたしがゴルフだなんて、なにもしないまま時間だけが過ぎた、気づけばコンペの前々日、慌ててウェアだけ買った、インスタのゴルフ女子を参考にしてみた、わたしには派手すぎるのかもしれない、クラブとシューズは借りられるらしい、ボールは明日買っておこう、迎えた当日は風が強かった、アゲているとかなんとか、先輩たちの話にはついていけない、カキーンとかパシューとか、先輩たちのナイスショットが続く、ついにわたしの番になった、みんなが見ていて緊張する、無我夢中で振ってみた、手ごたえはなくその場に転んだ、マンガみたいな空振りだった、ゴルフ場に笑い声が響き渡る、18ホール回ったけど記憶がない、スコアは途中から数えられなくなった、たぶん200以上叩いたと思う、手も足も腰も肩もパンパンだ、ゴルフなんて2度とやるもんか、そう思いながら目を閉じた、でも眠れなかった、ゴルフのことを考えていたからだ、地面に止まっているボール、かんたんなはずなのに、わたしだけが当たらない、カーテンが白くなってきた、もう起きてしまった方がいい、身支度をして軽めの朝食をとった、会社に行けば昨日の話になるだろう、いろいろ言われるに違いない、いや話題にさえならないのかも、わたしはダメ人間なのか、勉強していい大学に入った、第一志望の会社にも入った、かっこいい人に憧れていた、仕事ができるやさしい人、そんな人は空振りなんてしないと思う、きっとゴルフも上手いはずだ、わたしにもできるだろうか、決めるなら今しかない、ラッシュの電車に揺られながら、スマホの画面にこう打ち込んだ、初心者向けゴルフスクール。

こういう人もいると思います。

ここまで想像すると15秒のCMをつくるのはかんたんですよね。そのほか記事にもショート動画にも使いやすい濃厚素材です。

ターゲットの絞り込みとペルソナ設定だけでは足りない

人々が抱える悩みや迷いは言語化されていない場合がほとんどです。なんとなくわかっているけどハッキリこうとは言えない感じで。

なんとかしたいのに一歩踏み出す勇気がない。

そんなタイミングで「わたしのことだ」と思えるコンテンツに出会えたなら、一歩踏み出すきっかけになるのかもしれません。

マーケティングに関わっている人ならターゲットを絞るとかペルソナを設定するとか考えると思います。具体的な人物像を描くことで刺さりやすいコンテンツがつくれるというアレです。

30代、男性、サラリーマン。

ターゲットとしてはありがちですがこれだと情報不足ですよね。

そこでもっと人となりがわかるようにペルソナを設定します。32歳のシステムエンジニア、独身で川崎市内に一人暮らし、生まれは千葉県、東京理科大学卒業、趣味はフットサル、特技はカードマジック、年収は手取り380万、貯金は200万円、投資に興味あり、車のローンあり、転職は未検討、彼女はいないが35歳までに結婚したい、一日のスケジュールはこんな感じでと。

だいぶ浮き上がってきました。ただやはり架空の人物感が拭えません。その理由は心が見えないからなんだと思います。

どうすればいいのでしょうか?

先ほどのゴルフ女子みたいにその人の人生の一部を切り取った歌詞を書くつもりで、文章をつなげていけば映像が見えてくるはずです。さらに微妙な気持ちの変化を加えることで、コンテンツ制作に必要なストーリーの土台ができあがります。

誰かの事情と心情に寄せまくりのコンテンツで「わたしのことだ」と思わせてみましょう。