2022
05.26
読んでいる途中でググらせないためのスマート補足

読んでいる途中でググらせないためのスマート補足

WRITING

頭に「?」を浮かべることなく次へ次へと目を動かせるのが読みやすい原稿の特徴です。文章の中に知らない言葉が出てくると「どういう意味だっけ?」と目どころか思考も止まってしまいます。学会の論文や業界ニュースなら知っていて当然という感じで話を進められますが、読者を限定しない一般向けの記事ではスマートな補足が必要です。

どんなに面白い話でも一度離脱すると興味が失せる

面白い記事って一気読みしちゃいますよね。ニュースでもインタビューでも雑記でも本当に面白い記事は前のめりで活字を追うのが普通です。長編小説だとしてもハマってしまうと夜通し読み続けることになります。

ネットで読む記事のほとんどは1~3分くらいだと思いますが、その短い時間の中で読者は活字をイメージに変換しています。広大な草原、かわいい子犬、制服姿の女子高生。この程度であればどれもすぐにイメージが浮かぶはずです。

逆にイメージが浮かばない言葉は「?」と思考が一時停止します。道を歩いている途中で「あれ?どこに向かっているんだっけ?」というのに近い感覚です。あるいは急に先生が意味不明な数式を書き出したことをきっかけに数学嫌いになったとか、ドラマの登場人物があまりにも多すぎてチャンネルを変えたとか。

知識や経験によって個人差はありますが、誰もが自分の頭で想像できないことに拒否反応を示すものなのです。

そして向き合っていたものから一度離れてしまうと興味も薄れどうでもよくなります。

飲み会の途中でトイレに立ち、戻ってきたときには話題が大きく変わっていてトークに入れないときなんかもそうですよね。周囲との温度差はインドと南極くらい違います。さっきまであんなに盛り上がっていたのに、みんなの輪の中に入っていたのに。

記事においては読者を離脱させないことがとにかく重要です。

つかみどころのない数量の補足は基本中のキホン

以前、元自衛隊員の方と会う機会があったのですが、帰り際までずっと自衛隊時代の話をされていて、その途中で軽い頭痛を覚えました。仕事の取材ではないプライベートでのことです。こっちの知識が足りていないことは申し訳ないと思いましたが、何トンだとか何ノットだとか意味不明な数字が速射砲のように出てきて、まったく話についていけなかったわけです。

ということで一般向けの記事には下記のような補足が欠かせません。

<数量の補足>
119ヘクタール → 東京ドーム24個分の
最大風速17メートル → 台風並みの猛烈な
100兆円 → 日本の国家予算に匹敵する
500ミリグラムのビタミンC → レモン25個分に相当する

ごく普通の人が「はいはい」と相槌を打てるような補足を加えることで、つかみどころのない数量でも直感的に理解できるようになります。

専門的なテーマでは読者との距離感に注意

数量はほかの例に置き換えやすいので難しくありません。大きい数字なら「なるほどそんなに多いんだ」くらいに思わせればOK。なんとなくボリュームが伝わればいいのです。

そうじゃない例が次です。

ある分野において専門性の高い人との会話では知らない言葉をたくさん聞くことになります。相手が車に詳しい人なら車種とか年式とかワーッと出てきます。BMWとかベンツとかのレベルではありません。65年式のフォードのマスタングがあれでこれでという一般的ではないマニアックな話です。

で、そういうときにいちいち「なに?知らない?」と聞き返していると話の腰を折ってしまいそうなので知ったかぶりしちゃうことってありませんか?知らないことは知らないって言わなきゃ本当はダメなんですが「なんかもういいや」って聞き流したくなることもあって当然です。

車に限らず専門性の高いテーマを記事にするときは読者が初耳であることを想定しながらの補足が必要です。

<専門性の補足>
木村伊兵衛写真賞 → 写真界の芥川賞と言われている
ノダフジ → 新五千円札の裏面の図柄として採用された
パガーニ・ゾンダ → 前澤社長が乗っていて事故った

補足の仕方は用語をGoogleで調べればすぐにわかることです。ただ当然知っているだろうと思って書くのと、知らないかもしれないと思って補足するのでは読者との距離感が違ってきます。専門性が高くターゲットを絞っていない記事では一般常識よりもさらにマイルドなやさしさを持って執筆作業を進めましょう。