2024
01.06
完成目前のネーミングは「50音ローラー作戦」でしっくりさせる

完成目前のネーミングは「50音ローラー作戦」でしっくりさせる

WRITING

お店や商品のネーミングって悩みますよね。テーマにメッセージ、使いたいワードなど織り込んでいても名前としてしっくりこなければ使えません。そこで今回はほぼできているけど、なんか決めきれないという人のためのネーミング仕上げ術を教えます。

「ア」から「ン」まで全部当てはめながら印象チェック

たとえばカオリさんという人がいたとしましょう。現在、彼女はカフェの開店準備中で自分の名前を使った店名を考えているところです。おそらく学生時代のあだ名は「カオリン」だったと思いますが、そのまま店名に使うのは安直過ぎると悩んでいるようです。

ただこの手のあだ名はよくできていて、しっくりレベルでいうと80~90点の優等生です。

ということで最後の「ン」を別の文字に置き換えることで独創性を出すことにします。どうするかというと「ン」のところを「ア、イ、ウ、エ、オ、カ、キ……」と一文字ずつ当てはめていくだけです。

まずは「カオリア」ですが、そんなに悪くないと思います。次に「カオリイ」になるところをここは「カオリィ」または「カオリ―」の方が自然なのでしょう。そして「カオリエ」はどうにもしっくりきません。「カオリオ」も「カオリカ」も「カオリキ」も同様に戦力外です。

みたいな感じで50音のすべてを順次試していきます。これらをテキストに書き出しながらOKなものだけを残していくと有力候補はだいたい2~3個に絞られます。一巡したところで「アカオリ」「イカオリ」「ウカオリ」と今度は頭につけて有無を判断していきましょう。

面倒に感じるかもしれないこの「50音ローラー作戦」ですが、実際にやってみるとそんなに労力は使いません。アからンまでたった50文字。しかもヤユヨとワ行で6文字消えるんで、30分もあれば一通りのチェックを終えることができます。

声に出して伝わりやすいことはネーミングの必須条件

当てはめる作業以上に大切なのがしっくりくるかどうか、つまり違和感の判断です。お客さんの立場でネーミングに対する印象を考えるとかわいい、かっこいい、面白いのいずれかになると思います。しかしこれは完成したネーミングに寄せられる感想なので気にしないことです。

これからネーミングをつくる場合はやや違った視点が必要です。とり急ぎ、音として伝えやすいかどうかが第一関門になります。めずらしい名前の方は電話で自分の名前を相手に伝えたとき「え、なんですか?」と聞き返された経験が何度もあるはずです。また滑舌の悪い方も同様でわずか数文字の言葉が伝わらないもどかしさは相当ストレスに感じたことでしょう。

特に日本人が苦手としているのはラ行の発音です。ラリルレロ、読む前に噛みそうな匂いがプンプンしていますよね。よほどの理由がない限り使用を避けたい5文字です。いずれにしても実際に声に出してみて言いやすいこと、そして正確に伝わることが必須条件になります。

次にひらがなに変えてみてどうか、アルファベッド(ローマ字)に変えてみてどうかというチェックを入れます。カタカナ表記とひらがな表記のどちらでも構いませんが、見た目の印象はガラッと変わります。人間でいえば顔の表情みたいなものなのかもしれません。店名だと看板、ショップカード、名刺、チラシ、広告、DMなど用途が多岐に渡るため見比べておきましょう。

アルファベッド(ローマ字)の方はホームページのURLやSNSのアカウントに使えるかどうかを確認するためです。看板とか名刺とかに併記することも多いため、あとで後悔しないようにチェックをお忘れなく。

地味なインプット作業によってユニークが降りてくる

最後に確認したいのがユニークかどうか。ユニーク=面白いということではなく、唯一無二の存在であるかどうかの調査です。

手っ取り早いのはGoogleで調べることですが、苦労の末に決めたネーミングでも結構使われていたりします。店名であれば業態と地域が異なれば問題ないと思いますが、どうしてもユニークにこだわる場合はさらに一文字付け足してローラー作戦を行うなどもうひと手間かけるしかありません。それでも上手くいかないことは少なくなく、しっくりきてユニークなネーミングは難易度の高い課題です。

ただ2周、3周、4周と何巡かしているうちに、まったく別のアイディアが浮かんでくることもあります。

それがヒラメキです。

一人で考えている以上、自分の世界観から抜け出してこたえが見つけることはできません。散歩したりシャワーを浴びたりしているときに歌詞やメロディーが突然降りきたというシンガーソングライターのエピソードは聞いたことがありますよね。

きっとなにかがフックになって頭の奥底にある言葉や音をひっかけてきたのだと思いますが「これだ!これしかない!」という超ヒラメキでも結局自分の中のデータをピックアップしているに過ぎません。とはいえクリエイターならではのインプット作業があるため、データボリュームは一般人のそれと桁が違っています。

ゆえに「50音ローラー作戦」は有効な手段のひとつといえます。今まで発したことも聞いたこともない音との出会いはネーミングの最後の決め手になるはずです。

悩みに悩んでもうどうでもよくなりそうなときに一度試してみてください。