06.25
つかみのための「1分スピーチ」を上手くやるコツ
人前で話すときは緊張しますよね。なにを話せばいいのか、上手く話せるだろうか、スベるのだけは嫌だ。と、心配ばかりして「あいさつ例文集」に手を出さないようにしたいものです。ということで、つかみにちょうどいい「1分スピーチ」をマスターしましょう。プロレベルのトークスキルを身に付けるには?
本題に入る前の短い話で「聞いてみたい」と思わせる
つかみとは本題の前の短い話のことです。落語では枕(まくら)と言われるもので冒頭にやるクスッと笑えるような小話がそうです。漫才でもネタに入る前に一発ギャグをしたり自虐的な自己紹介をしたり、お客さんをいじったりして笑いを取りにいきます。
舞台の時間は限られているためなるべく短い方がよく「どーもー!」と袖から飛び出して10~15秒以内に笑いを取るのがつかみの基本です。
テキトー男こと高田純次さんがよくやる「どーも、アンジェリーナ・ジョリーです」もつかみのひとつですよね。
そもそもなぜつかみが必要なのでしょうか?
あなたが100人の前で自己紹介をするとしましょう。全員が赤の他人で誰もあなたのことを知りません。会場は水を打ったようにシーンとしています。マイクの前に立ち「わたしは茨城生まれの38歳で」と話しはじめたところで「えー、そうなんだ」と食いついてくれる人など皆無なのが現実です。
議員さんとか地元有力者の来賓あいさつなんか誰も聞いちゃいません。どこのだれかもよくわからないおじさんの話を聞くより、隣の人としゃべった方が楽しいじゃないですか。自分が話しはじめたら聞くのが当然という勘違いをしている人ほど、聞く価値ゼロのスピーチを長々とやりがちです。
そういうのはダメな見本として、冒頭のちょっとした時間で「この人の話を聞いてみたいかも」と興味を持ってもらうための短い話がつかみです。
プロの芸人さんは10~15秒以内ですが、普通の人だとまず無理なので1分を目安につかみを考えてみましょう。
普段からエピソードトークのための行動を心がける
つかみの必要性はわかったものの、なにを話せばいいのかわからないのが一番の問題ですよね。で、一般的なつかみのイメージは最初に述べたように笑いを取れるような話だと思います。実際に笑いを取ることができれば人々の心が緩むと同時に耳を傾けさせられると。
落語家でも漫才師でもない普通の人にそんなことができるのでしょうか?
もちろんできます。
身内や友だちや飲み仲間じゃなない赤の他人の前でもしっかり笑いを取れるはずです。
基本はエピソードトークです。過去にこんなことありましたと、それこそ芸人さんがラジオなんかで話しているやつです。小さいころでも、学生のころでも、つい最近の話でも時期はいつでも構いません。10年、20年と殻に閉じこもって生きてきたわけじゃあるまいし、エピソードがない人っていませんよね?
いわば人生経験のすべてがエピソードであり、つかみのネタにもなります。
つかみのネタになるようなエピソードは誰もがたくさん持っているわけですが、普段から人に話すことを意識していないと、思い出せないし上手くまとめられません。あとエピソードの数がとても重要です。仮に「小2のときにウンコをもらした」という失敗談があったとしましょう。残念ながらこれひとつだと戦えません。TPOに合わせられないからです。
その場の雰囲気に合わないつかみは100パーセント失敗します。
芸人さんはエピソードトークのためによく外に出ていくと聞きます。人に会う、店に行く、体験する。毎回面白いことが起こるわけではありませんが、これは打率の問題で10回に1回でも使えるネタが見つかれば上々です。面白いエピソードトークは使い回しが効くのでコスパがいいと思ってください。
ごく普通の人がエピソードを増やすために「はじめての」という言葉をつけておきます。
はじめての人に会う、はじめての店に行く、はじめての体験をする。
いつもと違うことをしてその状況を記憶すればいいのです。可能な限りイメージとのギャップも意識してはじめてのなにかをしてみましょう。
たとえばメガネにスーツ姿のいかにも真面目そうな中年男性が「昨日、生まれてはじめて占いに行ってきました」と話しはじめたらちょっと面白そうですよね。
文字に書き起こすこと、動画に撮ってチェックすること
話したいことは文字に書き起こすことで上手くまとめられます。本題はもちろん、つかみもそうです。
よく言われるのが「1分=400文字」です。作文でおなじみの原稿用紙1枚でちょうど1分に収まる話ができるというわけですね。では、当時の記憶を頼りにエピソードを書き出してみましょう。400文字ピッタリに合わせようとせず、ややオーバーの500~600文字でOKです。
次に書いた文章を声に出しながら読んでみてください。
おそらく読みにくいと思います。自分で書いている文章なのに読みにくいのは不思議ですが、単純に「自分の言葉」になっていないのがその原因だと考えられます。
国会答弁のように他人が書いた原稿を渡されて読もうとすると、知らない言葉が含まれていたり、普段使わない言い回しがあったりするものです。エピソードトークは「読まずに語る」のが前提なため、とことん自分らしい文章にしなければなりません。繰り返し読んでは書き直して、一語一句間違えないようになるまで修正作業を続けます。特に噛みやすい言葉があれば言いやすいフレーズに変えましょう。
スラスラと読める文章になれば下案の完成です。本番ではちょうど1分にならず、緊張して早口になるため50秒くらいで言い終えちゃうと思います。人前でゆっくり話すことは意外と難しいんですよね。
次に本番をイメージして動画を撮ります。声の大きさ、顔の向き、目の動き、身振り手振りをチェックしましょう。この作業はある意味辛いのですが、客観的な視点で自身のトークを確認することはとても大切です。繰り返し行うことでブラッシュアップされ、無駄がなく聞きやすい1分スピーチに仕上がります。