2023
02.06
脅威のAIサービス「ChatGPT(チャットGPT)」でライターは仕事を失うのか?

脅威のAIサービス「ChatGPT(チャットGPT)」でライターは仕事を失うのか?

WRITING

人工知能AIといえば昨年末の公開以降、あれやこれやと話題が尽きない「ChatGPT(チャットGPT)」です。なんでもAIがテキストを生成してくれるサービスだそうで、さらに日本語対応とくればライターとして無視できない存在です。AIの進化によってライターは仕事を失うのでしょうか?Siriで遊んでいたころが懐かしいですね。

文章なんて誰でも書けるのになぜ仕事になっているのか

AIによって消える職業というのがリストアップされていて、それが5年後なのか10年後なのかわかりませんが、案の定ライターもその中に入っていました。

そもそも文章なんて誰でも書けるものですよね。これを仕事として成立させるには下記の3パターンが考えられます。

(1)書く作業を代行している
(2)専門性を活かしている
(3)知名度がある

一番多いのは(1)の「書く作業を代行している」です。書く時間がない、書くのが面倒くさいという人から書き仕事を依頼されていると。企業であればリソース不足がもっともらしい理由になります。そしてニュースサイト、キュレーションメディアの運用はたくさんの外部ライターに支えられています。基本的には事実を整理して記事にまとめるだけなので人並みの文章力と集中力があれば誰でもできる仕事です。副業として人気なのも納得ですね。

(2)の「専門性を活かしている」は医療、政治、経済、IT、法律、宗教、気象など各分野のエキスパートが知見を活かしながら記事を書いている場合です。医療の知識も経験もない人が「冠動脈バイパス術」の説明記事を書こうとすると既存記事のコピペかリライトになりかねません。一方、医療系ライターと呼ばれる専門的知識を身に付けたその道のプロが書けば極めて信憑性のある記事になりますよね。ライター界隈の中ではエリートでブルジョアな人たちです。

(3)の「知名度がある」はタレントなど有名人が書くコラムなんかが当てはまります。書いている人自体に価値があるので、内容どうこうより知名度が高ければ高いほどギャラも上がります。頻繁に著書を出している有名人でも自分で書いていない例はめずらしくなく、いわゆるゴーストライターが仕事をこなしているのはよく知られた話です。ただ唯一無二の存在という意味で知名度を越えるものはなく、実際に誰が書いているかなんてどうでもいいのです。

AIが超絶進化したところで揺るがないのは有名人の書き仕事だと思います。仮にAIがゴーストライターに成り代わったとしても、名前のある人に報酬が振り込まれるだけです。剣よりペンより有名人が強いと。確かにその通りです。

AIはまともな日本語と読書感想文のヒントを返してくれる

では専門性も知名度もないWEBライターは近い将来、全員仕事を失うのかといえば絶対にそうとは言い切れません。

一般的なWEBライターに求められるのはスピードと正確性ですが、普通に考えれば両方ともAIにかなうわけがありません。ただ「スピード×正確性」だと当面は人間に分がありそうなので、AI以上かAI以下か自分自身を見定めながら仕事をこなしていくべきなのでしょう。

実際に試してみましたが「ChatGPT」の返しはヤバイです。しかも日本語がとてもお上手。大半の日本人はこんなにちゃんと書けないと思います。普段、数行の文章を書くのに苦労している人にとっては「もうこれでいいじゃん!」とキーボードを叩き割るレベルです。

書くのに苦労するといえば小中学生の敵、読書感想文です。ChatGPTの実力を測るために「走れメロスの読書感想文を書いてください。」と打ち込んでみたところ、次のような回答がありました。

<ここから>
「走れメロス」は、太宰治による日本の代表的な小説です。物語は、メロスが旅をすることで成長し、人間ドラマを描いています。読んでいて、メロスの人間ドラマに引き込まれます。また、当時の日本社会を描いている点も興味深いです。また、本書を読んで自分自身の思考や価値観を再考する機会を得られます。総合的には、素晴らしい小説であり、読むことを強くお勧めします。
<ここまで>

どうでしょうか?

さすがにこのままじゃ先生に怒られそうですよね。

そこで質問をちょっと変えて「太宰治の作品、走れメロスはなにを伝えようとしているのでしょうか?」と聞いてみました。ChatGPTの回答はこうでした。

<ここから>
「走れメロス」は、太宰治が伝えようとしているメッセージとして、人間ドラマや社会批判などがあります。

1. 人間ドラマ:メロスが旅をすることで成長していく様子が描かれています。彼の決断力や信念、愛する人に対する思いなどが描かれ、読者は彼と共に成長することができます。

2. 社会批判:本書は、当時の日本社会を批判する要素も含まれています。特に、権力者の腐敗や人々の愚かさなどが描かれています。

まとめると、「走れメロス」は、人間ドラマや社会批判を通じて、人間としての成長や正義といったテーマを伝えようとしていると言えます。
<ここまで>

話をまとめてきました。ひと目で優秀だとわかります。

ということで、今のところchatGTPで読書感想文を生成、コピペで提出という作戦は通用しそうにありません。ですが、得られた回答をヒントにすれば本を読まずして要点を押さえた読書感想文が書けると思います。クラス全員でやればバレバレですが。

いずれにしても今後の進化が楽しみなAIサービスであることは間違いありません。

事実以上のことを書けるかどうかがライターの分岐点に

ライターの仕事はネットの情報を参考にすることが多いです。信憑性を確かめながら複数のソースを当たります。この作業はchatGTPとたいして変わりません。

しかしながら、依頼に対してはターゲットを意識したり、伝わりやすい言葉を選んだり、表現方法を工夫したり、いろんなことをしながら原稿を書いています。残念ながらこれもAIにできそうなことです。

もう廃業しましょうか?

そういえばプロ棋士と戦うコンピュータがありましたよね。確か名前は「ポナンザ(Ponanza)」だったかと。リアルな「人間 vs AI」の構図をはじめて見たのがそれでした。電脳戦と呼ばれる大会では無敵だったと記憶しています。

どんなにAIが強くても人間が負けてもプロ棋士のみなさんは仕事を失っていません。

なぜなら人間同士の勝負に魅力があるからです。仮にAIが奨励会に入り4段に昇格、正式なプロ棋士として連戦連勝&トーナメント総なめとなったらどうでしょう。

単純に面白くないですよね。やる前から勝負が決まっているわけですから。

ライターの仕事に話を戻します。

結局のところAIが生成する文章を世間や業界がどう受け取るのかによるのだと思います。それが面白ければ、役に立てば、お金になればAIで十分という話になりますし、否定的であればもうしばらくは人間が活躍できると。

たとえば「AさんとBさんが殴り合った」という事実は誰でも理解できるし文字に書き起こすことができます。AIなら一瞬です。しかし「なぜ殴り合いがはじまったのか?」や「どうしたらケンカを防げたのか?」については人間的な考察が必要で、事実のみの展開で人々が納得できる記事は書けません。

ですが、一歩も二歩も踏み込んだ記事が一般的なWEBライターに求められているかというと、そんなことはないのでやはり知名度を上げるとか優位性のある立場を得るしか生き残る道はないような気がします。リミットが5年後なのか10年後なのか。書いている時間を削ってでも近い将来の準備をした方がいいのでしょう。