05.09
軽快な文章づくりに欠かせない「トリオ構成」を理解しよう
読みやすい文章にはいくつかの工夫が施されています。今回はその中のひとつ「軽快な文章づくり」です。ちょっと重ための内容でも文章を軽くすることで、気持ちよく読み進めることができます。ひとことでいうと「ピッチピッチ、チャプチャプ、ランランラン」みたいな感じです。
3つの要素が連なれば軽快なリズムが生まれる
文章と音楽ってかなり似ていると思います。原稿用紙と譜面で書き方の違いはありますが、テンポとかリズムの出し方はかなり共通しています。
たとえばギターだとシャッフルという弾き方のがあります。いわゆるハネたリズムで「チャッチャチャ、チャッチャチャ」と自然に首が動いてしまうほど軽快です。楽譜的には3連符(♪が3つ連なったやつ)で表されるのですが、この3という数字を意識すると文章にも応用できます。
では軽快な文章づくりの具体的な話をしていきましょう。あまりいい例ではないのですが、この説明のときによく使っているのでご容赦ください。
「場末のスナックのクソババァ」
はい、これです。なんか軽快じゃないですか?
「場末の / スナックの / クソババァ」と3つの要素で構成されていることがポイントです。チャッチャチャとかタンタタンとかポンポポンとか、先ほどのシャッフルのノリを文章に反映できていればOK。すごくカンタンですよね。とりあえずこの方法を「トリオ構成」と呼ぶことにします。
ヒット曲の歌詞にも使われる聞き心地のよさ
文章を軽快にする「トリオ構成」は歌詞でも見ることが多いです。J-POP、ロック、演歌などジャンルに関係なくいろんなところで使われています。
Lemon 作詞:米津玄師
「夢ならば / どれほど / よかったでしょう」
スカーレット 作詞:草野マサムネ
「離さない / このまま / 時が流れても」
明日はきっといい日になる 作詞:高橋優
「明日は / きっと / いい日になる」
津軽海峡冬景色 作詞:阿久悠
「上野発の / 夜行列車 / おりたときから」
津軽海峡冬景色はこのあと「青森駅は雪の中」と続くのですが、この歌詞の魅力はたった2行、わずか21文字で上野青森間を駆け抜けているところにあります。ちなみに石川さゆりさんの歌唱では脅威の11秒。歌詞の力ってすごいですよね。
なぜこれらが軽快なのか上手く説明できないのですが、フリ、フリ、ボケといったトリオ漫才のような安心感があるからのような気がします。そのほかエイエイオー、イチニノサン、ジャンケンポン、ホップステップジャンプ、五七五、赤白黄色、東京特許許可局など生まれてから今日までの刷り込みがあるのでしょう。
難しいことはなにもなくただ普通の文章になるだけ
と、いくつかの例を学んだところで、実際の文章に落とし込んでみます。
<自己紹介>
東京大学を卒業後、出版社勤務を経てフリーになりました。
<食レポ>
甘さの中に酸味があっておいしいです。
<観光レポ>
特急の車窓からぼんやり見えたのは青い海でした。
<インタビュー>
田中さんはそう言いながら目を輝かせました。
<マニュアル>
ファイルの保存を確認してから電源を落としましょう。
こういくつか書き出してみましたが、なんてことのない話です。むしろ自然にそうしている方も多いのではないでしょうか?いずれにしても普通かつ自然な文章であることが大切です。
もしご自身が書いた文章が引っかかる、重苦しいということがあればトリオ構成を意識するのもひとつの手です。内容を変えることなくスラスラと読みやすくできます。