05.03
読者にやさしい漢字のひらき方とは?
原稿作成において漢字をひらがなで表記することを「ひらく」と言います。商業ライティングには欠かせない基本テクニックですが、慣れるまではどの漢字をひらけばいいのかわからないときも多いことでしょう。漢字を上手にひらいて読者にやさしい原稿を目指しましょう!
よく使う「事」と「時」のひらがな化からスタート
ひらくor ひらかないに絶対的なルールはありませんが、どっちが読みやすいか見比べてみて少しずつ覚えていくのがいいと思います。まず紹介したいのが「事(こと・ごと)」です。ひらいた方が読みやすい漢字の代表例ともいえます。
・出来事 → できごと
・考え事 → 考えごと
・悪い事 → 悪いこと
とてもわかりやすいですよね。文中によく出てくる漢字なので、そのまま書くとかた苦しい印象になってしまいます。この横棒の多さが読者にストレスを与えるという感じでしょうか。漢字に罪はないのですが。
例外もあって「仕事 → 仕ごと」とはしません。なぜこれはNGなのかはただ違和感としか言いようがなく。
似たような理由で「時(とき・どき)」もひらきます。
・帰る時 → 帰るとき
・時々 → ときどき
・夕暮れ時 → 夕暮れどき
行くとき、帰るときのようにタイミングを意味するときはひらいた方が読みやすくなります。時々や夕暮れ時はケースバイケースですが、その漢字に深い意味がない場合はひらいた方がお茶漬けみたいにサラッと読めると思います。
このほか頻繁に登場する該当漢字を列記します。
又は( → または)、重い物( → 重いもの)、この為( → このため)、その筈( → そのはず)、例えば( → たとえば)、して下さい( → してください)、アメリカ等( → アメリカなど)
まだまだありそうですが「別に漢字じゃなくてもいいじゃん」と思われるものはどんどんひらきましょう。
「簡単」はかんたんじゃないし「子供」はかわいくないし
だいぶ前のことですが、ひらく or ひらかないの学習をしていたときに「あ、そういうことか」と思った例を紹介します。
・簡単 → かんたん
・優しい → やさしい
・易しい → やさしい
かんたんなのに漢字がかんたんじゃないから、やさしいのに漢字がやさしくないから。そんな理由でこれらはひらくと覚えました。
逆に「難しい → むずかしい」とはせず「難しい」と漢字のまま書いちゃいます。
あと「簡単」は「カンタン」とカタカナにすることでポップな印象になります。WEBの軽いコラムなんかではよく見かけますよね。
次にこれ。
・子供 → 子ども
・可愛い → かわいい
理由は「供」という漢字がかわいくないからです。「可愛い」は現代的な意味で考えると「かわいい」にするのが普通っぽくなります。
徹底してひらかない人たちもいるからややこしい
余談ですが世の中にはとことんひらかない人たちもいらっしゃって、お役所が作成する公文書なんか本当にそうですよね。やさしさゼロ、血も涙もない漢字の乱れ打ち、ありがたい経典かと思うほど読みにくいので困ってしまいます。
そんな漢字密度が濃い文書を見つけたときはテキストエディタに丸ごとコピペして、プチプチを押しまくるがごとくひらき倒しながらストレス解消に努めています。
この漢字は絶対にひらくということではなく、原稿の用途や掲載媒体によっても変わります。普段の仕事でいうと出版社や編集担当でも意見が分かれる漢字は結構あって、その辺はすべてグレーゾーンです。
またさっきのお役所のように漢字を多用したからといって、間違った文章というわけではありません。相手が小学生だったらルビを振るとか、ギャルだったらギャル語変換するとか読みやすくするための手法のひとつだと思ってください。