2024
06.18
飛ばないライターはただのライターではない

飛ばないライターはただのライターではない

WRITING

ライターは誰でもできる仕事です。読み書きの「書き」ができればOKなので参入障壁はなし。現在進行形でライターをやっている人、過去にやっていた人はめちゃくちゃ多いと思います。その一方で「もう無理だ!」と飛びやすいのもライターならではの話です。

連絡がつかなくなってもライターに関しては心配無用

コンビニや飲食店はアルバイトのスタッフさんが頼みの綱です。来てくれないと店は回らず、お客さんにも迷惑がかかるので当日になってからドタキャンはタブーじゃないでしょうか。

とはいえ急な体調不良など本当にダメなときは無理強いできません。運よく代わりの人が見つかればいいのですが、店長さんの深夜ワンオペとか大変そうな状況を見かけることもあります。

そういえば以前、千葉の田舎のコンビニで店長さんが倒れているのを発見したことがあります。深夜3時ごろだったでしょうか。店に入るとお客さんは誰もおらず、店員さんの姿も見当たりませんでした。とりあえず商品を手に取りレジに向かいましたが「すみません!」、と大きな声で呼んでも店員さんがやってくる気配はありません。1分ほど待ったところでさすがにおかしいと思いました。緊急事態と割り切って関係者以外立ち入り禁止のバックヤードに足を踏み入れ、3歩ほど中に入ったところで男性が倒れているのを発見しました。「大丈夫ですか?」と声をかけましたが返ってきたのは気持ちよさそうなイビキ。つまりバックヤードの床で爆睡していたのです。安心したものの防犯上の問題もあるのでこのままというわけにはいきません。体を数回ゆすると起きてくれましたが、足はフラフラで陳列棚に肩をぶつけるほどの寝ボケ具合でした。そしてネームプレートには店長の2文字が。もう何連勤しているのかわかりませんが日本の人手不足が深刻なことを痛感しました。

それはさておき、事情がなんであれ出勤できないときはなるべく早く連絡するのが社会の常識です。

常識破りなのが連絡なしで来ない、ずっと来ない、一生来ない、いわゆる飛ぶ、つまりバックレる人たちではないでしょうか。連絡がつかないと事故に遭遇したとか、事件に巻き込まれたという可能性もあるわけで心配になっちゃいますよね。

普通の仕事なら心配して当然です。

が、ライターに関しては特に心配しなくてもいいのかもしれません。

迫りくる締切りがさらにやる気のなさを加速させる

ライターは本当によく飛びます。バッタ並みのジャンプ力でピョンピョンしているのがライターです。

明日とか明後日の急な納期で原稿の依頼が来たときにはこう思うワケです。

「飛んだな」と。

紙媒体だともう少し早い段階で連絡が来ますが、WEBの場合はいつもギリギリだったりします。というかWEBライターは飛びやすいのが現実です。

飛んでいるわけですから連絡はもちろんなし、メールを送っても返信は来ず、電話をかけても出てくれません。

体調不良や身内の不幸なら飛ぶということはないと思います。

それ以外でなぜ飛ぶのか考えてみました。

やる気が出なかった、面倒くさくなった、なにもかも嫌になった、原稿よりも大事なことに気づいた、書くなという神のお告げがあった。

やむを得ないですね。

おそらくやる気が出なかったのが一番の理由かと。

ほぼ手をつけていないまま締切りが明日になって「あーもう無理だー」と投げ出してしまう気持ちはわからないでもないです。3日かかるものを1日でやるのは物理的に無理ですよね。できないものはできないと。かといって「できません!すみません!」と謝ったところでなにかが変わるわけでもなく、だったらバックレてしまおうかという理屈なのかもしれません。

まるでそんな仕事は最初からなかったかのように。街で偶然会ったとしても「知らない」「わからない」「え、なんすか?」と真顔で言われてしまうのでしょう。

責任を感じにくい環境がライタージャンプをサポート

そういえば夏休みの宿題ってギリギリまで着手しなかったりしますよね。夏休みの終わりの3日前くらいになってフルスピードで片づけるみたいな。

追い込まれた子どもたちの集中力は侮れません。

仮に宿題が終わらないからといって「もう学校に行かない!」と登校拒否を宣言する子どもはめったにいないと思います。

やりかけでも中途半端でもいいからとにかく学校に顔を出して、先生に怒られるなりクラスメイトにいじられるなりのペナルティを受け入れるのではないでしょうか。

WEBライターがよく飛ぶのはオフラインじゃないからですよね。責任感がどうこうという話もありますが、リアルな責任を感じにくい環境の中で仕事しているわけですから、そういう問題はあって当然なのかもしれません。

あと別に自分じゃなくてもという言い分もありそうです。

ほかに代わりはいくらでもいると言われやすい業界です。確かに代わりはいくらでもいます。昨日の今日で見つかるかどうかは微妙ですが「あなたにしかできない」という属人的な仕事ではありません。

そもそもライターの仕事って時間さえかければなんとかなりそうなイメージがあると思います。だから案件に手を挙げる人が多いわけですが、いざ原稿を書こうとするとなかなか進まず、1時間でようやく2~3行だったりするとさすがにやる気がなくなるじゃないですか。バイトしていた方が100倍マシじゃねーのとか。やはりライターにも向き不向きがあって、向かない人が初回でピョンピョン飛んでいるだけのことです。

逆に飛ばない人はライター適正検査の合格者です。発注側にとっても希少な存在であり、ただ飛ばないというだけでもヒエラルキーの中の上くらいに君臨できます。